北京的生活Ⅱ 北京の魔法瓶
北京の水道水はそのまま飲まない方が良い。硬すぎる。現地の人でもおなかをこわす。細菌についてはよく知らないが、全体的な判断としては「飲用可」ということになっているそうなので、衛生面ではそれほど心配ないのだろう。でも、超超超硬水というのはおなかによくないらしい。
食器を洗ってそのまま乾かすと、水滴のあとがくっきりと見えるし、加湿器の掃除をするときなど、「うわぁ~!!!」と思うほど水垢が付いている。まあ、もっと頻繁に洗え、ということなのだろうが。湯沸かしポットも、5,6回沸かすと、電熱線の形に湯垢が付く。それを落とすための、強酸の粉末も売っていて、これはポットに水を張って粉を溶かすと、驚くほどよく取れる。
さて、我が職場の宿舎にはお湯のサービスがある、北京で一番よく目にするデザインのこのポットで、服務員さんが一日2回、お湯を届けてくれるのだ。
レトロな花柄がたまらない。
これは、「鹿牌(鹿印、のような意味)」というメーカーのもので、中の保温瓶は交換可能である。なぜ交換するのかというと、倒すと割れるからだ。
私事、私はこれまで5本、この保温瓶を弁償した。ドアを開けたとたんにタマが走り出て、よその部屋の前に置いてある瓶にぶつかって倒し、タマはそのまま逃げ帰り、私はフロントで弁償、20元なり。
外出から戻ってドアを開けるとタマが飛び出してきそうなので、ポットでブロックすることにし、それは成功したのだが、置いたポットの位置が悪く、ドアを閉めたら倒して弁償、この時だけは、なぜか25元なり。
あとは似たり寄ったりの状況なので以下省略とするが、さすがに4本目の後、つまらない繰り返しに嫌気がさして、
「もう、お湯、いいです。自分でポット買って、部屋で沸かして入れます」
とフロントに話し、服務員さんへはフロントからその旨連絡してもらって、一路、ポットを買いに出た。
直径が大きければ倒れにくいだろうと考えて、3リットル入るものを買った。……28元だった。同じメーカーである。中身が20元とすると、外側の値段は微々たるものだ。
さて、年度が改まって、新しい服務員さんが入ってきた。またお湯が届けられるようになったのだが、説明するのが面倒だったのと、もう同じ間違いは繰り返さないだろうと考えてそのままにしておいた。
すると先日、外に出たがるタマを抱き上げつつドアを開け、お湯の瓶を室内に入れ、ドアを閉め、一歩踏み出すと、置き場所の悪かったポットに体当たり。
「ガシャ」
……何度か聞いた音だ。正確には、過去4度、聞いた音だ。
延々とかかって掃除をし、フロントに弁償に行くと、係の先生は
「猫ね?」
とすでに笑顔である。まあ、4回繰り返せば5回目の原因も想像が付くだろう。曰く、
「今度から角に置いたらいいわよ。ぶつかっても倒れないし。やけどしないでね」
正論だ。自分のまぬけさ加減にさらに嫌気がさす。
そして、
「どんな猫? 白?」
と、タマに興味をそそられた様子だったので、後日、写真を見せに行ったら大喜びだった。思わぬ日中友好の一場面だったが、それにしても、ポットの中味だけに125元も出費してきた自分が嘆かわしい。☆
鹿のマークが目印です。
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